ブタ・偶蹄類 Artiodactyla


偶蹄類(Artiodactyl)

蹄(ひづめ)をもつ有蹄類のうちウシ目(偶蹄目)に属する動物の総称。ギリシャ語でartiosは偶数、dactylosは指またはつま先の意味である。ウシ類、イノシシ類、ヤギ類、キリン類、ラクダ類、シカ類、アンテロープ類、カバ類などがふくまれ、クビワペッカリー(→ ペッカリー)とクチジロペッカリー以外は、それぞれの足に偶数本の指をもつ。
進化的にもすすんだグループで、種数も比較的多い。偶蹄類に分類されるほとんどの種はアフリカ産であり、南北アメリカ、ヨーロッパ、アジアなどにも生息している。だがオーストラリアには分布しない。→ 生物地理学
■形態的特徴
奇蹄類が第3指(中指)だけで体重をささえるのに対し、偶蹄類は第3指と第4指(薬指)で体重をささえる。その遠い祖先は5本の指をもっていたが、進化するにつれて、第1指(親指)が完全に消滅し、第2指(人差し指)と第5指(小指)は、痕跡をとどめているにすぎず、ほとんど退化している。この偽蹄とよばれる小さな突起状の退化指は、体重をささえる2本の指より上に位置し、ふつうはまったく機能していない。ただし、やわらかい地面をこのむイノシシやカリブーなどでは、足が土にもぐりこまないようにささえる役目をはたしている。
偶蹄類の体重をささえる2本の大きな指のつま先は、蹄になっている。カバは4本の指の大きさと幅が均等で、偶蹄類の中でも特異な部類に属する。
食性は基本的に草食性だが、イノシシ類だけが例外的に卵や小さな爬虫類、昆虫、腐肉なども食べる。上顎(うわあご)には門歯がなく、ほとんどの種は上顎の犬歯がないが、上顎には下顎の犬歯とかみあう低い突起がある。オスに洞角(→ 角)または枝角がある種が多いが、一般に足の速さと感覚の鋭さで捕食者(→ 捕食)から身をまもる。
■3つのグループ
偶蹄類は1847年にイギリスの比較解剖学者リチャード・オーエンによって、はじめて独立した1目に分類された。現在は3つのグループにわけられている。イノシシ類などの反芻(はんすう)をおこなわないグループ、ラクダ類やリャマ類などの反芻するグループ、上顎に門歯がない完全な反芻グループである。このグループには、マメジカ(小型で角がない、シカに近い動物)類、アンテロープ類、ウシ類、シカ類、キリン類などが属している。→ 反芻動物
分類:偶蹄類は哺乳綱ウシ目(偶蹄目)を構成する。不反芻類のイノシシ亜目、核脚類のラクダ亜目、完全な反芻類のウシ亜目(または反芻亜目)の三亜目に分類される。


ブタ

家畜化された哺乳類で、イノシシの仲間。食用として、ほぼ全世界で盛んに飼育されている。ウシ目(→ 偶蹄類)に属し、上下の顎(あご)に2本ずつ、上や外にむかって牙(きば)状にのびる大きな犬歯がある。それをふくむ44本の歯を特徴とする亜目に分類されるが、家畜化の結果、多くの品種で牙は小さくなっている。
豚は、ヨーロッパに生息するヨーロッパイノシシと東南アジアに生息するアジアイノシシの2種に起源をもつものと思われる。これらの野生種は、約9000年前に中国で、ややおくれてヨーロッパでそれぞれ別個に家畜化された。南北アメリカに豚を移入(→ 帰化種)したのはコロンブスやスペイン人の冒険家たちで、現存の野生豚は、それらの子孫であろう。
■特徴
成熟した家畜豚の体は、ずんぐりとしている。やや長い、よくうごく鼻先をもつ。短い脚には、2つにわれた蹄(ひづめ)がある。尾も短い。あついが敏感な皮膚は、あらい剛毛におおわれている部分もあり、色はさまざまである。イノシシ類のほかの仲間と同様に、家畜豚もあしがはやく、かしこい。
成長や成熟がはやく、食肉の生産にはうってつけである。妊娠期間がおよそ114日と短く、出産のたびにたくさんの子をうむ。雑食性で、さまざまな種類の食べ物をかたづけてくれる。これが家畜化された理由のひとつであろう。食料資源としてみれば、穀類や大豆などの豆類を肉にかえてくれる存在である。肉以外にも、皮革がかばんや手袋に、剛毛がブラシにつかわれる。何世紀にもわたり、食用脂の原料にもなっている。アメリカ合衆国では1920年代半ばまで、ラードを大量に生産するために品種改良がおこなわれた。しかし、イギリスなどでは赤身の肉を生産するために品種改良がおこなわれ、ベーコンタイプとよばれる豚が生まれた。400品種をこえる現在の豚は、この2つのタイプの中間型で、食肉タイプの豚として知られている。脂肪の需要がへってきたため、ベーコンタイプにより近い食肉タイプの豚が開発されたのである。
■飼育数
豚は温帯性および亜熱帯性気候に適応しており、世界のさまざまな地域で飼育されている。1998年の統計で飼育頭数の多かった国は、4億8570万頭近い中国、6100万頭近いアメリカ合衆国、3143万頭のブラジルとなる。これにつづく国は、ドイツ、スペイン、ポーランド、ベトナム、ロシア、インドとなり、日本は980万頭となっている。世界全体では9億5361万頭以上になるものと推定される。
アメリカ合衆国の養豚業は、中西部のコーンベルト(トウモロコシ地帯)に集中している。とくに盛んな州は、アイオワ、イリノイ、ミネソタで、インディアナ、ネブラスカの各州がこれにつづく。このほか養豚の盛んな州としては、ミズーリ、ノースカロライナ、オハイオ、サウスダコタ、カンザス、ミシガン、ウィスコンシン、ジョージアの各州がある。
分類:哺乳綱ウシ目(偶蹄目)イノシシ科。ヨーロッパイノシシの学名はSus scrofa、アジアイノシシはS.vittatus。家畜豚はS.domesticus。